2025.8.1
今年の5月6月は2年ぶりに抽象画の制作に勤しみました。
描くまでの準備にかなり時間を要しますが、抽象画の制作自体はあっという間。
緻密に時間をかけて日本画を描いていると大胆に一筆で決まる抽象画を描きたくなるのです。
それにしても2年も空いてしまったのには訳があります。
わたしの抽象画制作には欠かせない”刷毛”(表具用の糊刷毛((のりばけ)10寸)が生産終了に
なってしまったからです。
襖(ふすま)や障子のある建築物が激減しているのでやむを得ないですが。。。
プロの職人が使用する内装、インテリア工具を販売する広島さんの糊刷毛、
その中でも最大サイズの10寸幅約30㎝刷毛。
これが一番良い、と気づいた時にはすでに遅し。
表向きにはどこにも販売されておらず、
広島担当さんに探し回っていただいて1本どうにか
手に入れることができたのが2年前の秋。
10寸より小さい幅約24㎝の8寸刷毛も生産中止になるかも、という話を聞いて
ちょくちょく購入し続け24本持っていますが10寸は2本のみ。
他にも貴重な他メーカーさんの10寸刷毛を試してみましたが
全然生きた線にならず…これも含めると10寸は3本所有。
使えば使うほど消耗して寿命を縮めてしまうので
ためらっている間に2年の月日が経過してしまいました。
とはいえこのまま描かずに宝の持ち腐れにするより描いてみようと、
大事に大事に手入れしながら8寸と並行して描きました。
そして本家では断られましたが広島さんの刷毛そっくりに作れるかもしれないという
別の業者さんが見つかり現在試作品を作っていただいているところです。
日本画も抽象画もわたしの制作においては日本の伝統産業なくして成り立たない。
日本画はそれなりに描く人がいるので画材の消滅についてあまり心配していませんが、
表具用の糊刷毛で絵を描く人はおそらくわたし以外にいないので…少なくともわたしは知らない…
この伝統産業をなくさないためにも他の皆さんにもぜひ使ってみてほしいと思います。
糊刷毛を表具以外に、絵を描く以外にももしかしたら使い道があるかもしれないですね。
「color#51」P6サイズ410×273mm10寸刷毛で制作↓